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イーヴォ・ポゴレリッチ・ピアノ・リサイタル2014


メモ風になりますが、本年(2014)12月14日サントリー・ホールでのイーヴォ・ポゴレリッチ・ピアノ・リサイタルの印象を記しておきます。いずれ機会を改めて 記事を書き足すと思います。まずポゴレリッチのリサイタルのお楽しみは、リサイタル前の会場で普段着姿のポゴレリッチが観客おかまいなしにピアノをポローンポロンと鳴らしているのを聴くことです。これが良い前座になります。今回も早めに着席しましたが、驚いたのは去年までと違ってポゴレリッチが旋律らしきものを弾いていたことでした。正確には旋律というよりパッセージというべきでまだ旋律とまで 行っていないかも知れませんが、去年まではポローンポロンとただ単音を、時に和音を鳴らすだけだったのです。何と今年は音が連なっている。ここにポゴレリッチの内的 な変化を感じないわけに行きません。これまでだと分解しそうな自己を繋ぎ合わせようとするような感覚がありましたが、ここまで繋がってきたかというある種の感動がありました。これを回復というべきなのか、吉之助には分かりませんが、そのように 受け取る方は多いだろうねえ。果たして本番はどんな感じになるかということで期待して、リサイタル開始を待ちました。

プログラムはかなり難易度が高い四曲で構成されていました。まずリストの「ダンテを読んで」はポゴレリッチの息の深さが素晴らしい。息の深さがあるから、遅めのテンポでも音楽が弛緩しません。思索の奥底まで連れて行かれる思いがしま した。シューマンの幻想曲はこれは浪漫主義の典型というべき作品で、響きの豊かさ・というか過剰さのなかから何を引き出すかということだと思いますが、ポゴレリッチは 重量感ある構造体を浮き上がらせました。それにしても、緊張感あるから持つとは言えこのカロリーたっぷりに付き合うのは、聴衆にとっても聴くこと自体がなかなかひと仕事です。ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」はそのリズム感もさることながら、他の奏者だと 特に冒頭のロシア舞曲はリズムと色彩の奔流でワーッと押し切る感じで目が覚める思いがしますが、そこ はポゴレリッチ、リズムの軽みとひとつひとつの音のニュアンスで勝負というところか。結果としてピアノという楽器の特質をよく生かした演奏であると云えます。ブラームスのパガニーニ変奏曲は、聴くとこれがいつものブラームスとはちょっと思えない技巧的な華やかさがある実験的な作品ですが、ポゴレリッチで聴くとどの音も尖っている感じでこれが良いのだな。

(ちなみに今回リサイタルのプログラムは下記の通りでした。)
リスト:「ダンテを読んで」
シューマン:幻想曲
ストラヴィンスキー:「ペトルーシュカ」からの三楽章
ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲

(H26・12・27)


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